BIツールを検討しているお客様の多くは、Excelでの集計や表作成をBIツールに置き換えることで省力化できるというニーズをお持ちです。BIツールは、一度レポートを作成すれば、データが自動的に更新され、人が手作業をしなくても常に最新データで結果を確認できるからです。また、BIツールを使うことでデータ分析が進み、より多くのことがわかるのではないかと期待されるお客様もいらっしゃいます。しかし、ここでひとつ問題があります。BIツールでの可視化は主にKPI(重要業績評価指標)の進捗を追う目的で使用されます。KPIをドリルダウン(細分化)して原因を探ろうとすることがよくありますが、ここに落とし穴があることをお気づきでしょうか。
分かりやすいように、複数の営業所を持つ会社が、全営業所の合計売上高をKPIに設定しているケースを考えましょう。この会社では、全体の売上高が計画値を超えることを目標に掲げ、その進捗をBIツールで追いかけています。BIツールでは、全体の売上を店舗ごとに分け、店舗別の進捗状況が可視化されます。これにより、KPIを達成している店舗と、達成していない店舗が一目でわかるようになります。経営者は当然、達成率の低い店舗に対して改善を求めますが、果たしてそれで数字が改善するでしょうか。達成率の低い店舗も、これまで精一杯努力してきたはずです。上から厳しく指示されても、具体的に何をどう改善すれば売上が伸びるのかがわからないケースが多いでしょう。もし、その答えが分かっていれば、すでに成果が出ているはずです。
このように、単に「結果を細分化する」だけでは、改善には結びつかないという課題があります。KPIを確実に進捗させるためには、事前にKPIと強く関連するアクションを特定する必要があります。これをKSF(キーサクセスファクター)と呼びます。まず、経験的に関連が認められている項目をKSFとして特定します。さらに、過去の売上データやアクションデータとの関連性を評価し、関連性が強い項目をデータ解析によって見つけることで、さらにKSFが明確になります。
データ解析を行うことで、これまで経験的に売上と関連があると思われていた項目が、実際には関連していないことも明らかになる場合があります。私たちが取るべきアプローチは、このKSFを明確にし、BIツールを用いてその進捗を管理することです。すべてのKSFが目標を達成すれば、KPIも自然と良い結果につながるでしょう。このように、原因を明確にし、具体的なアクションを改善することで、成果を向上させる使い方をしていくのが望ましいです。この方法により、KPIが低い店舗の店長は「このアクションが不足しているため、売上が目標に届いていない。だから、今月はこのアクションを100%実行するようにしよう」という具体的な指示ができるようになります。
弊社では、このようなKSFを解明するデータ解析の実施やKPIとKSFの効果的な可視化について、ご提案いたします。
CASE1:洋食店の売上を増加させた事例
KPIの深堀りではなく、KSFの進捗管理によってKPIを改善
課題
ある洋食店では、毎月の売上目標をKPIとして設定し、新しいメニューを追加して売上増加を図っていました。しかし、売上は伸び悩み、顧客数の増加にも繋がりませんでした。店主が『お客様が喜ぶ』と考えるメニューを増やしても、実際には顧客ニーズや不満を把握できておらず、売上目標を達成できない状況が続いていました。売上高という結果に重点をおき、原因に踏み込んでそれを改善するということができていなかったのです。
メニューごとの日々の売上の管理を楽にしたいというニーズがあり、弊社にBIツールによる可視化の依頼が来ました。
施策
弊社では売上高をメニューごとに分割しても売上高の改善は見込みにくい。その代わりに売上高が低迷する原因を明確にし、その原因を可視化して、改善することで売上高を伸ばすことを提案しました。
最初に、売上高と関連が強い行動の探索に取り組みました。売上高というKPIを代替する指標として「新規顧客数」と「リピート顧客数」とし、それぞれの顧客数を増やす行動を定めました。そして、新規顧客向けの施策として、初回限定の割引サービス導入とInstagramでお店の魅力を発信する「インスタ集客」を開始し、写真や動画を通じて広く集客を図りました。
一方、既存顧客にはアンケートを実施し、その結果から満足点と不満点を洗い出しました。満足点として「店員との会話」や「ランチ後の無料の高品質な珈琲サービス」が挙げられたため、その強化を図りました。不満点としては「お子様セットの不足」、「お酒メニューがない」、「地域相場より高い価格」が挙げられていたため、これらの不満を解消する施策を検討し、実施しました。
進捗管理はBIツールを活用し、とった行動の効果を示す指標(KSF:重要成功要因)を設定し、施策の効果を推移を観測することで可視化し、伸び悩んでいる場合は別の施策に変更しました。
★週ごとのInstagramフォロワー数
★割引サービスの利用数
★お子様セットの注文数と食べ残し量
★お酒メニューの注文数とその売上比率
★価格調整後の各メニューの注文数
★既存顧客数
★新規来客数
さらに、写真撮影用の特別ディスプレイを設置し、SNSでシェアすると特典が得られる工夫も行い、口コミ促進を図りました。
成果
新規顧客の取り込みと既存顧客の満足度向上を目的とした取り組みに注目し、行動面の可視化と行動の見直しを4か月継続したところ、顧客のリピート率が約20%向上し、売上高も約1.3倍に増加させることができました。
CASE2:企業データを活用した改善事例
同席営業で取引を増加させた事例
データを活用する必要性を感じているが、どう対応していいのか分からない。そのような企業に対してヒアリングを行い、ともにデータを利用する方法を検討して、経営効率を高めていきます。
システム会社が顧客との面会される際、弊社を同席させてプレゼンテーションを行うことでシステム採用率が向上する事例が増えてきております。下図は営業支援として、既存顧客である機内食メーカーにデータ利用の重要性を説明し、実際にデータ利用のプロジェクトが立ち上がった事例です。